2019年10月5日(土)
【覚書】エニアタイプ5 観察者
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エニアタイプ5 観察する人の側面について


 パーソナリティタイプのエニアグラムで、タイプ5とされる性格傾向について

 各タイプの特徴について、ランダムに掲載しており、その記述の仕方も統一したものではなく、タイプによって違った書き方になっています。
 タイプ5:観察する人・考える人・真理を求める人・革新的な人


 その特徴から、呼び方はいろいろあります。その呼び名からタイプ5の特徴が、直観的につかめる部分があれば、あまり一つの呼び名にはこだわる必要はないでしょう。

◆性格のポジテイブな面(長所や強みとなっているところ)
 冷静で、理性的で集中力があり、研究熱心な人です。自分が興味を持った分野の事柄について、とことん追求していく根粘りと集中力があります。純粋に知的な好奇心に突き動かされて、物事の本質を知ろうとします。情報を集めて、客観的に分析、総合し、仮説を立てるなどして真理に迫っていきます。

 その場の状況や物事をよく観察し、自分自身の主観や先入観にまどわさず、冷静で客観的な判断を下すことができます。物事を筋道だてて考え、起こりうる事態を予測することができる一方、誰も考え付かなかったような奇抜なアイデアや革新的な発想をもたらすこともあります。自分の持っている知識や技術を生かし、その道の専門家となれる人です。

◆性格のネガテイブな面(短所や弱みとなっているところ)
 何事も頭で考え、頭で納得しようとするため、理屈っぽく、行動力に欠ける面があります。感情的に冷淡なところがあり、他人の気持ちを理解せず、自分の気持ちや感情を表現するのも苦手です。

 非社交的で、自分からは積極的に人と交わろうとしません。身体感覚に乏しく、頭のなかのバーチャルな世界に引きこもる傾向があります。自分自身の気持ちや感情に触れようとせず、また他人の気持ちや感情に対する思いやりや想像力に乏しい面があります。

 最初、自分をタイプ5だと思う人は……

 エニアタイプ5に関する性格のポジティブ面の記述は、思考タイプの特徴をよく表すものです。そして、タイプ5は9つのタイプのなかでも、ある意味で「人気のあるタイプ」と言えるのではないでしょうか。

 最初にエニアグラムの9つのタイプについての記述を読み、チェックテストなどやってみて、自分はタイプ5だと思う人は少なくないでしょう。

 何十年も前のことですが、筆者もエニアグラムと出会って、最初にエニアタイプについての記述を読んだとき、タイプ5に当てはまる部分は多いと感じました。ある団体がやっていたオリアリーらの著書の翻訳からもたらされたチェックテストでは、タイプ5がもっとも多く該当する項目がありました。それは何度やっても同じでした。

 自己診断では、なかなかタイプに行きつかないという問題を、筆者は当初よりずっと考えていていました。そこで、日本語として自然な表現で、しかもタイプの傾向に結びつくような設問を考え、何度も何度もチェックリストを作り替えるなどしてきました。
 
 自己診断は言葉を用い、該当する項目を選ぶものです。そこにはすでにマインドが作用してます。自分がどのタイプであれ、もちろん誰の中でもマインドは機能しているわけですから、そこで、マインドにとって心地いい記述を選んでしまうということが起こりえます。これが私だと。

 タイプ5の「考える人」という呼び名は、「頭で考える人」ですが、多くの人が自分は頭でものを考える人間だと思っています。そして、そのことは知的によりよく機能している人間というイメージとつながっており、ポジティブに捉えられます。

 エニアグラムではタイプの誤認ということがときどき起こりえます。エニアグラムを教えている人の中にさえ、タイプを誤認しているらしく思われる人がいることがあります。いくつかの観点から見て、その人がタイプ5ではなく、別のタイプだと考えられる理由があったとしても、本人がそのタイプを名乗っている以上、周りが言うべきことは何もありません。

 とはいえ、タイプを誤認したファシリテーターからエニアグラムを学ぶと、各タイプについての理解にバイアスがかかり、しばらくの間混乱をきたすことがあるかもしれません。

 またタイプの判定というところで、筆者の見立てが必ずしも正しいとは言い切れません。言い切ってしまうようになったら、それは筆者のとらわれとなります。自分の見立てが100パーセント正しいと思ったら、エゴが前面に出てきて、そこでファシリテーターの目は曇ってしまうでしょう。

 その人のタイプについて疑問点があることを、お互いに話し合うようなことは、よほど信頼関係があるところでなければ、両者にとって気付きをもたらすようなワークにはならないものです。したがって、自分のタイプを探求していくときには、参加者がお互いに敬意をもって、なおかつフレンドリーな雰囲気で話せる、よきグループでのワークが望ましいかと思います。
 
 タイプの誤認が生じる理由の一つには、ペルソナ的な役割としての自分を、本質とつながっている本来のタイプと見誤ることにあります。その人の本来の性格の上に、その人の置かれた環境や職業上望ましいと考えられる性格が覆いかぶさっています。そのペルソナ的自我、たとえば職業上身についている性格、役割的な性格であったり、環境における望ましいとされている性格といったものと、自分自身を同一化してしまうこともあり得ます。

 自らのタイプについての誤認は、親子関係が大きく影響している場合もあります。したがって、これはエニアタイプ5についての話から離れ、タイプ探し全般のことになりますが、自分のタイプが分かりにくいというときは、親子関係に関するワークに取り組むことが必要かもしれません。

 親子関係についてのワークでは、いささか心に痛みを伴うこともありますが、それを超えていくと自分自身の性格タイプが浮かび上がってくるだけではなく、自由への広がりがもたらされるようになります。



 さて、この記事の最小の方にあげたエニアタイプ5の特徴は、「理系人間」のような記述に傾いてしまいました。しかし、すべてのエニアタイプ5の人が科学的にものを考えたり、哲学的な思想を構築しているわけではないでしょう。

 音楽や芸術、運動、ビジネスその他、どのようなジャンルにもタイプ5の人はいるでしょうから、それぞれのジャンルにおいて、自身の強みを発揮されているはずです。

 たとえば、子育て中の母親であるタイプ5の女性は、子供の食事に関して栄養面をきちんと考えた料理やおやつを作っておられました。

 もし、あなたがエニアタイプ5だとしたら、またあなたの近しい人がタイプ5だとしたら、その人のもっともタイプ5らしい特徴が表れているのはどんなところでしょうか?

 エニアタイプ5は、知的に有能でありたいという欲求を持ち、無知無能であることを恐れます。そして、その欲求と恐れは、タイプ5でなくても多くの人の中にある欲求や恐れでもあります。

 無知無能であれば、生きていけない。無知無能であることを恐れるために、エニアタイプ5は知ろうとする。しかし、ともすると興味の範囲は狭く、深くという方向に向かっていく傾向があります。専門家的とか、オタク的という表現を用いると、そのことの意味がイメージしやすいかもしれません。

 ただ、「専門家的」はともかくとして、「オタク」という呼び方を否定的に捉えるか、あるいはもっと親愛の情を込めて用いるかは、人によって受け止め方が違ってくるようです。筆者はわりあいポジティブな意味合いで「オタク」文化や「オタク」的関心のあり方を受け止めています。これは多分に、個人的な興味によるところもあるので、エニアタイプ5を形容するために、これ以上この言葉を用いるのは控えることにいたしましょう。

 エニアタイプ5は未来指向です。頭の中に沸き起こることは、いまここではないこと、まだ起きていないこと、この先起こるかもしれないことであったりします。過去よりも未来に意識が向いています。

 タイプ5は平和を愛する人でもあります。「平和」といえば、エニアタイプ9は平和を好む人とか平和を作り出す人と呼ばれ、タイプ9的なものを連想する人も多いでしょう。しかし、エニアタイプ5の人の中にも平和主義者は少なくないのです。

 人間の知性は平和を求め平和を愛します。タイプ5的な「平和」については、ドイツの哲学者イマニュエル・カントの思想などにその特徴が表れているのではないかと思われます。

 イマニュエル・カント:永遠平和のために (岩波文庫)

 
<対人関係の問題点>
 エニアタイプ5は、きわめて内向的で、非社交的なタイプです。あまり人と関わろうとしません。自分自身の感情から自分を切り離し、他者からも切り離された状態になることがあります。自分自身が人との関係を拒絶しているのですが、それは他人にエニアタイプ5に対して関わりようのない感じを与えることになります。

 自分の興味のジャンルにおいてはとことん追求しますが、その他のことにはほとんど興味を示しません。人とのコミュニケーションにおいて、「世間話」のような何気ない会話ができず、時に苦痛になるようです。

 孤独を好むタイプですが、孤独はときに孤立の状態になりかねません。

感情的なとらわれ(Passion)はためこみです。

 「強欲」とされていたこともありますが、このことばでエニアタイプ5のとらわれを理解するのは難しいと思います。エニアタイプ5は欲が強いというよりはむしろ、多くのものを求めず、少ないものでやっていける人です。自給自足的な生活、ミニマリスト的な生活をする人もいるでしょう。

 ただ、自分の持っているものをため込むという傾向があります。分け与えない。「ためこみ」は、モノをため込むということもあるかもしれませんが、むしろ情報や知識をため込むというところに特徴があるかと思います。また、愛情や思いやりを示しにくいというところにも、人に分け与えないためこみがあるのでしょう。

<例>皆が知りたい情報について、その場では誰も知らないがエニアタイイプ5はそれについてよく知っているという場合。自分からは、しかしそのことを誰にも教えない。

「そのことに詳しいなら、なぜ、どうして教えてあげなかったの?」

「別に、聞かれてないし」……

 

 エニアタイプ5 観察者の思考法

 エニアタイプ5は「考える人」と呼ばれることがあります。タイプ5の思考法について見てみることにしましょう。エニアタイプ5はタイプ6、タイプ7とともに、思考センターの三つ組みに入ります。

 思考センターはヘッド(頭)センターと呼ばれることもあります。ちなみに、感情センターはハート(胸)センター、本能センターは腹(ガッツ)センターとも呼ばれます。



 思考センターのタイプの人びとはとくに、頭の中に空間を感じていることが多く、頭の中に引き出しがあるとか、迷路のようなものがあると表現されることがあります。

 以前、エニアグラムサロンで話されたタイプ5の方は、頭の中には碁盤の目のような広がりがあり、何かの問題について考えるとき、その碁盤の目のどこかにAという考えが置かれ、そうすると次に、Bという考えが浮かび、それはまたこうも考えられるということで、Cという考えが浮かび、それらをどのように結び付けていくか、推論することで、論理的な道筋ができ、仮説が立てられるということでした。そこで展開された論理的筋道は、検証されていなければ仮説に終わるけれど、実証されれば真実となるわけです。

 もっとも、この説明は筆者が思考センターのタイプではないので、正確ではありません。専門教育や専門分野などで訓練を受けている場合は別として、一般的に本能センターや感情センターのタイプは、エニアタイプ5のような思考法は得意ではありません。それは思考法が異なるという意味において、そうなのです。

 たとえば、エニアタイプ1完全主義者の場合はどうでしょうか? エニアタイプ1は冷静に、秩序立てて、問題解決をはかろうとするタイプです。理性的で勤勉な人です。しかし、タイプ1には「これが正しい」「こうあるべき」という基準があります。その基準に従って物事を判断するわけです。したがって、エニアタイプ1は、すでにある物事をこうあるべきという方向に「改革」していくことが得意となります。

 エニアタイプ1の落ち着きは、本能センターの腹のエネルギーからきています。

 これにたいして、エニアタイプ5の思考空間には、「何が正しい、正しくない」といったスタンダードがあるのではなく、仮説が展開されることになります。可能的世界へと開かれているのです。

 頭の中の思考空間が開かれているために、インスピレーション的に降りてくるアイデアが、これまでにないまったく新しいものとなる場合があります。エニアタイプ5は改革者ではなく、革新的なアイデアをもたらす人、すなわちイノベーターとなるわけです。

 ここで語っていることは、思考法の違いについての説明です。

 では、エニアタイプ3はどうでしょうか? エニアタイプ3:目標達成者、ステイタスシーカーは、合理主義者です。エニアタイプ3の思考法は、エニアタイプ5のような思考空間における論理的筋道をたどるわけではなさそうです。合理的ということと、論理的ということは、思考のプロセスにおいて大きな違いがあります。

 エニアタイプ1、エニアタイプ3、エニアタイプ5は、リソ&ハドソンによる問題解決の共通グループ(ハーモニックグループ)において、合理型と呼ばれるタイプです。その意味は、問題処理の仕方において、感情をさしはさまない、感情を切り離して、理性的に解決をはかろうとするということです。

 エニアタイプ3の思考法は、論理的というよりも合理的です。そして、タイプ3の合理性は実利的なものを志向しています。タイプ3はプラグマティックです。

 エニアタイプ3の思考のとらわれは「欺瞞」です。論理空間は可能的空間であり、そこに欺瞞は成り立ちませんから、エニアタイプの思考法は論理的な思考ではないといえます。

 タイプ5的に論理の筋道をたどっていこうとすると、そのプロセスは長くなり、文章化したときも長い文章になっていくでしょう。あるいは抽象化ということが行われます。

 この抽象化ということも、エニアタイプ5における特徴の一つです。

 抽象化とは、いくつかの具体的な事例をひとくくりにして一つの言葉で表現することです。たとえば、ひまわり・あさがお・きく・チューリップは「花」で、犬・猫・ねずみ……は「動物」ということになります。

 エニアタイプ5は通常の会話でも、このような抽象化を行っていることが多いのです。あなたがタイプ5だとしたら、子供のころ、遠足の体験などを書いた作文で、教師から「もっとわかりやすく、具体的なことも書いてみましょう」などと言われたことがあったかもしれません。

 抽象化はまさにマインドによって行われている思考法です。それが普段の会話などで行われていると、話の内容は具体性を欠き、会話は短くはしょられてしまいますね。聞き手には具体的なことがわからないので、よくわからない話になってしまう場合があります。

 エニアタイプ5は内向的なタイプで、一見、おとなしい、物静かという特徴がありますが、エネルギーに乏しい人ではありません。エニアタイプ5のエネルギーは、頭の中の世界に流れ込んでいっています。それはかなり強烈なエネルギーで、タイプ5のマイワールドを特徴づけるものになっています。

 タイプ5の思考のとらわれはリソ&ハドソンでは「保持」となっています。知識や情報をたんに記憶することと、それが知恵となっているかどうかは異なるものです。

 エニアタイプ5的世界観について、リソ&ハドソンは仏教的世界観を例にあげています。また、旧約聖書のコヘレトの言葉(伝道の書)に記されている世界観。

「空の空、空の空、いっさいは空である」伝道の書(コヘレトの言葉)

 エニアタイプ5の美徳は無執着です。なにものにも執着しない。そして、エニアタイプ5の聖なる考えは、英知、すなわち聖なる知恵。

 何ものにも執着せず、自らの記憶に頼る知識や情報に頼らず、ただただ真理を求めましょう。


 
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