2020年7月9日(木)
エニアグラムって何?心理学なの?宗教なの?占いなの?
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エニアグラムって何?
心理学なの? 宗教っぽい?


エニアグラムは古くて新しい人間学
エニアグラムは人間の内面についての古代の賢人たちの深い洞察と現代心理学・精神医学の研究成果が結びついた古くて新しい人間学です。

古代の人々は神や宇宙や人知を超えた聖なるものへと思いをはせ、神秘的なものと人間の内なる魂との関係について考えました。この宇宙のなかで人間とはどういう存在なのか、神の前にどう生きるのか、何が求められているのか、魂の救済はあるのかといったことが問いわれてきました。

エニアグラムの背景には、こういった人間の宗教性に根差した問いがあります。

現代の日本人のなかには、「宗教嫌い」や「宗教アレルギー」の人が少なくないようですが、宗教とは本来、「人間が謎に満ちた宇宙の中で、自分には一体どのようなチャンスと任務があるのかを知ろうとして行う自己探求の旅である」(ゲルト・タイセン)という意味において、エニアグラムの人間学は、やはり宗教的なものと結びついています。

エニアグラムは古代の知恵と現代心理学・精神医学の成果が結び付いた人間学
エニアグラムのルーツと特徴は、古代ギリシャ哲学やユダヤ教、原始キリスト教、イスラム教の神秘思想に通じる人間のスピリチュアリティ(霊性)についての洞察と、現代心理学・精神医学の研究成果が統合されたものだという点にあります。

「スピリチュアル」という言葉は、「宗教」ほど抵抗がない人が多いですね。むしろ、「スピリチャルな癒し」「スピリチュアルグッズ」などは、占いと同じように人気があります。

現代人が古代の人びとより精神的に進化しているという考えをお持ちの方がいたとすれば、それはたぶん正しくないでしょう。人間の精神性についての洞察は、3000年以上昔の人びとの洞察を超えてはいません。

わたしたちは古代の賢人たちの思想について、その思想の深い内容までは理解していなくても、名前ぐらいは知っているものです。たとえば、ソクラテス、プラトン、アリストテレスといった哲学者、イエス・キリスト、ブッダのような宗教家、孔子、老子、孟子といった東洋の思想家など。人間の知性は3000年ほど前にはだいたい出そろっているとも言えるのです。

性格類型論としてのエニアグラムは1970年代に広まった


エニアグラムの普及に貢献した2人の人物
エニアグラム図そのものは、20世紀の思想家グルジェフによって発見され、西欧社会にもたらされたものです。グルジェフは東方教会の流れをくむキリスト教徒で、イスラムの神秘思想スーフィーの教えにも通じていました。グルジェフのキリスト教思想は、初期のころのキリスト教思想にさかのぼります。それが原始キリスト教と呼ばれているものです。

この図の上に9つのタイプの原型を載せたのが、オスカー・イチャーゾという南米生まれの思想家です。そして、イチャーゾの9類型と現代心理学・精神医学の統合を行ったのが、オスカー・イチャーゾの弟子であり心理学者・精神医学者であるクラウディオ・ナランホでした。イチャーゾは当初エニアグラムではなく「エニアゴン」と呼んでいた図形に、原分析という独自の方法を用いて人間の心のとらわれについて説明しました。

オスカー・イチャーソは2020年に逝去、クラウディオ・ナランホは2019年に逝去されました。ドクター・ナランホは生前ノーベル平和賞にノミネートされたこともある学者です。

しかし、イチャーゾの天才的なひらめきだけでは、現在に流布するような形でエニアグラムが一般に流布することはなかっただろうと考えられます。クラウディオ・ナランホが大きい役割を果たしているわけです。

ナランホ以後、エニアグラムはいくつかの流派によって伝えられ、一般に流布するにいたりました。そのことについては、このサイトの中で何度か繰り返し触れていますので、興味のある方は、そちらをお読みください。

エニアグラムはサイコ・スピリチュアルなレベルへと向かう
エニアグラムの知恵は、9つの性格タイプという次元で自己理解のために大いに役立つものです。ふだん気づいていない自我の傾向に気付き、自己の潜在的な能力や長所を伸ばしていくことができます。コミュニケーションスキルの向上や対人関係の改善にも大いに役立つでしょう。

ただ、自我の防衛からの解放と自己の変容につながる気づきは、心理的レベルでは得にくいものです。長くエニアグラムを学んでいる私たちが大切にしているのは、タイプ分けのエニアグラムではなく、変容のためのエニアグラムです。そのためには、心理的レベルの底を貫いて、心理的・霊性的(サイコスピリチュアル)な次元へと深まっていく必要があります。




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